保護猫をお迎えしたものの、「シャーシャー」と威嚇されてケージの隅から出てきてくれない…。そんな臆病な猫の態度に、「この先、本当に仲良くなれるんだろうか」と不安や焦りを感じていませんか?
この記事では、実際に私が体験した、トイレに立てこもるほどの臆病な保護猫が、3ヶ月かけて触らせてくれるようになるまでの全記録を綴ります。
私が試した具体的な人馴れ訓練や、猫が見せた小さな変化、そして飼い主としての心の葛藤まで、正直に書きました。
威嚇と拒絶の日々…お迎え初日のリアルと「慣れない」絶望感
私と愛猫「ノルン」との出会いは、保護猫施設でした。ケージの中にいたノルンは、誰が見ても認める6ヶ月の美少女猫。しかし、その体は猫用トイレの中にすっぽりと隠れ、ひどく緊張している様子でした。
「この子はまだ人馴れしていなくて…」というスタッフさんの言葉通り、可愛らしい顔とは裏腹に、心は固く閉ざされているのが分かりました。
私は猫の飼育経験がなかったのでもっと人馴れした子がいいんじゃないかと思ったのですが、夫はその子に惹かれ、2週間のトライアルを開始。
名前は、怖がりだけどツンデレな美人に育ってほしいという願いを込めて、アニメ『無職転生』のキャラクターから「ノルン」と名付けました。
しかし、期待を胸に迎えた初日、私を待っていたのは想像以上に手強い現実でした。
- ケージの隅で「イカ耳」: 耳を真横に倒し、全身で「来るな!」と拒絶。ケージをタオルケットで覆いました。
- 悲しい夜鳴き: 夜になると「アオン、アオン…」と寂しそうな声で鳴き続け、胸が締め付けられました。
- 絶え間ない「シャーシャー」: ご飯をケージに入れようと手を入れるだけで「シャー!」。触ろうものなら、全力で威嚇されました。
その姿を見て、私の心は「かわいい」よりも「これからどうしよう…慣れる日は来るのかな」という不安でいっぱいになりました。これが、威嚇と拒絶から始まった、私たちの物語の幕開けです。
我が家の初期環境設定(最初の1ヶ月)
ちなみに、当時の環境は以下のように設定しました。
- 生活スペース: 最初の1〜2日はケージ内のみ。その後は1部屋だけを開放。
- 隠れ場所: 正直なところ、特別な隠れ家は用意していませんでした。ケージとベッドの下が彼女の安心できる場所になったようです。
- トイレ・食事: 脱走防止と安心感のため、全てケージ内に設置しました。
いつもはケージの置いた部屋ではない寝室で寝ていますが、少しでも早く慣れたらいいなと思い、私たちも同じ部屋に布団を敷いて寝ていました。
効果があったのかはわかりません。
【試行錯誤】臆病な猫の心を開くために私が試した全記録
「このままではいけない」と思い、私がノルンとの距離を縮めるために試したことを、時系列と小さな進歩を交えながらご紹介します。絶望の中にも、確かな光が見えた瞬間がありました。
1. 「無視」と「無言」が基本!猫のペースを尊重する
まず徹底したのは「猫のペースを尊重すること」でした。可愛いからと構いすぎず、あえて無視する時間を作りました。ご飯やトイレ掃除など、必要なお世話は淡々と。話しかける時も、目を合わせずに高い声で優しく、を心がけました。
2. 食事は2日目からOK!意外な図太さに希望が見えた
驚いたことに、ノルンはお迎え2日目には目の前でご飯を食べ、トイレもきちんとしてくれました。怖がりな性格の一方で、生きるための本能はしっかりしている様子。「この子は意外と図太いのかも?」と、そのギャップに少しだけ希望が持てました。
3. おもちゃでの遊びは最優先!楽しい記憶を積み重ねる
同じく2日目から、猫じゃらしには興味を示してくれました。これは大きな進歩です!手で触るのはまだ無理でも、「この人といると楽しいことがある」というポジティブな記憶を積み重ねてもらうため、毎日ご飯の前に一緒に遊ぶことを日課にしました。
4. 最強おやつ「ちゅ〜る」はスプーンで攻略
猫と仲良くなるための最強アイテム「ちゅ〜る」。しかし、ノルンは警戒心が強く、手から直接は食べてくれません。そこで、長めのスプーンの先にちゅ〜るを出し、少し離れた場所からあげる作戦に切り替えました。これにより、私の「手」を怖がらせることなく、美味しいおやつ体験を提供できました。
5. 「孫の手」と「歯ブラシ」で間接的に触れる練習
直接手で触ると「シャー!」と怒られるため、人馴れ訓練として有名な「伸びる孫の手」や「歯ブラシ」を使ってみることに。顔の周りを歯ブラシで優しく撫でると、なんとおもちゃと勘違いしたのか、じゃれて甘噛みしてくるように!直接触れ合うのとは違いますが、これも一つのコミュニケーションだと前向きに捉えました。
6. 「シャー」が消えた日(ただし条件付き)
地道な努力の結果、お迎えから3週間ほどで、ご飯をあげる時に「シャー」と言われなくなりました。これは大きな進歩です!しかし、相変わらず手で触ろうとすると威嚇される、「条件付き」の雪解けでした。
7. 「触れないけど、そばにいる」距離感の変化(2ヶ月目)
2ヶ月が経つ頃には、さらに大きな変化が。私がソファでくつろいでいると、触れるか触れないかの絶妙な距離で、ノルンが一緒に寝てくれるようになったのです。心はまだ許してくれていないけれど、私の存在を「安全なもの」と認識してくれた瞬間でした。
しかし、この時点でもまだ触ることはできず、「このままじゃ爪切りも病院も無理だ…」という焦りが募っていたのも事実です。
【3ヶ月目の奇跡】ついに威嚇がゴロゴロに変わった、歴史的な瞬間
試行錯誤を続けて3ヶ月。焦りと期待が入り混じる中、その日は突然やってきました。
私が家で仕事をしていると、足元にいたノルンが甘えるように「にゃーん」と鳴きながら、後をついてくるのです。いつもと違う、明らかに「構ってほしい」という鳴き声。そして、歯ブラシで撫でた時とは違う、自発的な「ゴロゴロ」という音が聞こえてきました。
(もしかして…今なら…?)
まるで神様からチャンスを与えられたような気持ちでした。
私はゆっくりと床にしゃがみ、心臓の音を聞かれてしまいそうなほどの緊張の中、これまでの3ヶ月間の教え通り、指先の匂いを嗅がせるように、そっと手を伸ばしました。
そして、ついに。
私の指が、ノルンの頭に、初めて触れました。
ノルンの体は一瞬「ビクッ!」と固まり、少し嫌そうな素振りを見せました。しかし、逃げなかったのです。「シャー」も言いませんでした。
その瞬間、こみ上げてきたのは涙ではなく、「…触れるやん!」という、驚きと安堵が入り混じった、魂の叫びでした。
ここで欲張ってはいけない。感動に浸るよりも先に、「よし、今日はここまで。ゆっくり、ゆっくり」と自分に言い聞かせ、そっと手を引きました。
たった数秒の出来事。でもこれは間違いなく、威嚇と拒絶の90日間が報われた、私とノルンにとって歴史的な一歩でした。
臆病な猫と家族になるということ|現在の様子と伝えたいこと
あの歴史的な日から数ヶ月。私とノルンの関係は、信じられないほどに変わりました。
今のノルンは「ストーカー猫」です!
あれだけ人を怖がっていたノルンは、今では私の後をどこまでもついてくる「ストーカー猫」に大変身!朝起きればベッドの横にいて、キッチンに立てば足元にスリスリ、トイレにまでついてこようとします(笑)。
もう「シャー」という言葉は、私たちの辞書から完全に消え去りました。自分からお腹を見せてゴロンと寝転がり、「撫でて」と催促してくる姿は、3ヶ月前の威嚇していた姿からは想像もつきません。
課題は「極度の人見知り」。今後の目標
ただし、ノルンの臆病な性格が完全になくなったわけではありません。私には心を許してくれましたが、お客さんなど私以外の人が家に来ると、今でもベッドの下やクローゼットの奥に隠れてしまい、絶対に姿を見せません。
「色々な人にかわいがってもらえたら嬉しいな」という気持ちもありますが、これもノルンの個性。まずは私が一番の安心基地であり続けることが大切だと考えています。いつか、ほんの少しでも他の人にも心を開いてくれる日が来たらいいな、と気長に構えています。
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